幾つになっても惑ってばかり

日々思ったこと、本や映画の感想やアニメなど趣味の話を脈絡なく綴っています

熱帯感傷紀行

所要で電車に1時間半ほど乗るので
何度か読んだ中山可穂さんの
「熱帯感傷紀行」を持っていきました。



2002年出版のものなんですが、
題名にある通りかなり感傷的なので
読む方にもパワーがいるんです。


当時の中山さんは同性の恋人との仲も
終わりかけ、仕事もスランプで
逃げるように、アジアへ
貧乏旅行に出かけます。


アジアの貧乏旅行なので
ホテルも格安だから汚いし
町も混沌として読んでるだけでも
大変そう。
なのに作者は自分を痛めつけるように
どんどん大変な方へと進んでいくし。


旅の途中で思い出すのは彼女のこと。


愛している。まだ愛している。
愛している。未練がとまらない。
もう愛してない。愛せない。
憎しみだけが募っていく。
わたしのたったひとつの望みは、
記憶喪失になることだった。
あのひとにつながるすべての記憶を忘れたい。
忘れなければ生きていけない。



焼きたてのパンと卵と珈琲の朝食を
食べてから国際電話をかけるのだ。
そしてあのひとに、もう一度だけ
やり直そうと告げるのだ。
わたしはあなたなしでは
生きられないと言って泣くのだ。
「バッカみたい」
わたしは声に出してその案を却下した。


センチメンタルが過ぎる。
でも感覚的で激しくも普遍的な感情に
引きずり込まれちゃう。


先が気になってどんどん読んじゃうんだけど
読み終えると一仕事を終えたような
疲労感があります。
だけど時折また読みたくなるんですよね。


むき出しの感情の波に浸りたいときに
お薦めの一冊です。