幾つになっても惑ってばかり

日々思ったこと、本や映画の感想やアニメなど趣味の話を脈絡なく綴っています

夜の向こうの蛹たち

近藤史恵さんの
「夜の向こうの蛹(さなぎ)たち」読みました。




とても面白かったです!!



以前、単行本でも読んでいたんですが
文庫本が出たので購入しました。


主人公の織部 妙(おりべ たえ)は
中堅の小説家でレズビアン。
美人だが容姿を売りにするのは好まない。
そんなある日、“美人作家”として話題の新人、
橋本さなぎの処女作に衝撃を受ける。
しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の
サービス過剰な対応にどこか幻滅してしまう。
織部の興味を惹いたのは、
橋本の秘書である
初芝 祐という女性だった。


主人公がレズビアンなのである意味
百合小説になるかと思うのですが、
とても普遍的な恋愛小説なのが面白い。


私が思わず笑っちゃったのが、
冒頭から際立つ主人公・織部の毒舌ぶり。


「そんなに美人と言われるのが嫌なら、
化粧をするのもやめればいいんじゃないですか?」
うるせえ。
化粧もするし、美容院には月に一度行くし、
エステにだってときどき行く。
でもそれによって得られる利点は、

わたしがコントロールするし、
容姿が目立つことへのデメリットは拒否する


うるせえ。
とか
ぶっ殺す。
とか、心の中だけですがめっちゃ過激。
でも思わず共感しちゃう。
人間腹立つと口悪くなりますよね。


初っ端からこんななので
織部の性格はきついタイプなのかと
思いましたが、読んでいくとそうでもない。
むしろ、好きなタイプには弱いし
計算高いようで抜けてるところもあって
とても人間らしい。


4人の女性の恋愛模様も描かれるんですが
みんなちょっと自己評価が低くて
ちょっとずるくてちょっと優しい。
等身大の女性たちばかりなので
それぞれの気持ちに共感を持ちやすい。


織部は恋愛に対して慎重になっているけど
好みのタイプに弱い。
色々考えて行動してる割に、
どこか抜けていて窮地に陥っちゃう。
何度女性に部屋に踏み込まれてるんだ!
ほんと面白いわー。


切なかったのが速水との関係。
きっと容姿にだけ自信があった速水が
織部に愛されていないことに気が付いてしまう。
織部も手遅れになってから
愛し始めていたことに気が付く。
人間の愚かさが切ない。


ラストの締め方もユニーク。
お薦めです。