幾つになっても惑ってばかり

日々思ったこと、本や映画の感想やアニメなど趣味の話を脈絡なく綴っています

いつも旅のなか

角田光代さんの「いつも旅のなか」を読みました。



2008年に発行されたエッセイなんですが、
また重版されたようなので購入。


角田光代さんのエッセイはだいたい
ハズレがないのが素晴らしい。
角田さんの仕事のスタイルは
会社員のように17時までに仕事を
終わらせて、土日はお休み。
仕事として作品を書いているからなのか
どのエッセイも客観的で
内容に過不足なくそして面白い。


私がうむむむと思うエッセイは
興味深いネタを投げかけておいて
軽くスルーして終わってしまうもの。
つまり消化不良で座りが悪い。
作者本人は事の顛末を知ってるから
スルーしても問題ないんだろうけど、
読者はその後どうなったの?とか
どうやって事を収めたのかが気になるんですよ。


あまりそういう構成が続くようだと
私には合わないなとその作者の本は
結局買わなくなっちゃう。
エッセイには客観的な視点も必要だと
個人的には思ったり。


つい前置きが長くなっちゃいましたが、
こちらのエッセイは世界様々な国の
空気感やそこで出会った人たちのユニークさ、
そして角田さんの旅に対する姿勢の変化
などがが楽しめます。


中でも私が特に面白いなと思ったのが、
「A DEAD DOG IS…」という章。


内容はバリに行って
ドラッグを体験した時の様子。
令和の5年にこんな内容が読めるなんてと
思わず震えてしまいました。
だって今じゃ書けなさそう。


私はクレイージージャーニーが好きで
よく見てるんですが、そのなかで
案内人がドラッグがまん延してる町を
歩いたりしているときに、
中毒者が道で立ったまま動かなかったり
変な姿勢で止まってたりするのが
不思議だったんです。


その理由がこちらのエッセイを読んで
よく分かりました。
角田さんが体験した(一応合法の)薬物の
効果がどのようなものか微に入り細に入り
描いてくれてるので、臨場感が半端ない!
薬物こえええーってなりました。


こんなの体験してないと書けないし、
逆に普通の体験者は角田さんのような
文章力は無いから、おおよそ
「ぶっ飛んだ。その後記憶がない」
とかで終わっちゃう。


文章力があるってすごい。
て、プロの作者さんに言うのもおかしいけど
私はこんなに過不足なく薬物の怖さが分かる
文章に出合ったことがない。


これを読んだだけでも知識として
貴重なものがインプット出来たなとにんまり。
他の章も面白いのでご興味があればぜひ。

夜の向こうの蛹たち

近藤史恵さんの
「夜の向こうの蛹(さなぎ)たち」読みました。




とても面白かったです!!



以前、単行本でも読んでいたんですが
文庫本が出たので購入しました。


主人公の織部 妙(おりべ たえ)は
中堅の小説家でレズビアン。
美人だが容姿を売りにするのは好まない。
そんなある日、“美人作家”として話題の新人、
橋本さなぎの処女作に衝撃を受ける。
しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の
サービス過剰な対応にどこか幻滅してしまう。
織部の興味を惹いたのは、
橋本の秘書である
初芝 祐という女性だった。


主人公がレズビアンなのである意味
百合小説になるかと思うのですが、
とても普遍的な恋愛小説なのが面白い。


私が思わず笑っちゃったのが、
冒頭から際立つ主人公・織部の毒舌ぶり。


「そんなに美人と言われるのが嫌なら、
化粧をするのもやめればいいんじゃないですか?」
うるせえ。
化粧もするし、美容院には月に一度行くし、
エステにだってときどき行く。
でもそれによって得られる利点は、

わたしがコントロールするし、
容姿が目立つことへのデメリットは拒否する


うるせえ。
とか
ぶっ殺す。
とか、心の中だけですがめっちゃ過激。
でも思わず共感しちゃう。
人間腹立つと口悪くなりますよね。


初っ端からこんななので
織部の性格はきついタイプなのかと
思いましたが、読んでいくとそうでもない。
むしろ、好きなタイプには弱いし
計算高いようで抜けてるところもあって
とても人間らしい。


4人の女性の恋愛模様も描かれるんですが
みんなちょっと自己評価が低くて
ちょっとずるくてちょっと優しい。
等身大の女性たちばかりなので
それぞれの気持ちに共感を持ちやすい。


織部は恋愛に対して慎重になっているけど
好みのタイプに弱い。
色々考えて行動してる割に、
どこか抜けていて窮地に陥っちゃう。
何度女性に部屋に踏み込まれてるんだ!
ほんと面白いわー。


切なかったのが速水との関係。
きっと容姿にだけ自信があった速水が
織部に愛されていないことに気が付いてしまう。
織部も手遅れになってから
愛し始めていたことに気が付く。
人間の愚かさが切ない。


ラストの締め方もユニーク。
お薦めです。

神田神保町書店めぐり

日本から絶滅してしまったと
思われていた秋。
過ごしやすい秋。大好きだ秋。
そんな私たちの秋が復活し、
季節も良いので神田神保町へ
書店めぐりをしてきました。


本は好きなんですが、
神田神保町に行くのは初めて。


というのも昭和初期とかの古本見ても
価値が分からない人間なので
世界最大の古書店街だと聞いても
うむ。なるほどね!と
遠い世界の話としか思わなかった私。


でもショッピングモールで出店していた
古本コーナーで懐かしの明星を見つけてからは
俄然興味が湧いて、私にもわかる!と
身近に感じてワクワクしながら行ってみました。


神田駅で降りるとすぐに本屋さんがあって早速沈没。
その後、神保町方面へ歩いて向かいます。
どうやらこの辺りは
古本屋と普通の本屋と雑貨屋のみつどもえで
出来ているよう。


こんなの楽しいに決まってる!!!


雑貨屋さんで思わずクリスマスの
スノードームを購入。
完全に浮かれています。



今回私が狙う古書は、別マかジャンプかnon-no。
なかなか無いなぁと思いながら歩いてたところ
外のワゴンに無造作に入ってたジャンプを発見!



昭和58年(1983年)3月7日号!!
500円也。これは買うでしょう。
ジャンプは小学生の頃
よく立ち読みしていました。
懐かしい!!



「ハイスクール!奇面組」好きでした。



そして「風魔の小次郎」
この効果線が懐かしすぎて。



目次を見てみると作品が豪華なこと!
ほぼ覚えてるものばかり。
「よろしくメカドック」好きでした。


他にもここにはないけれど
「シェイプアップ乱」とか。
最初は下ネタ満載でキライだったのに、
だんだんギャグにハマってしまって。
個人的には「ストップ!!ひばりくん!」が
見たかったな。


歩き疲れたら、カフェもあちこちに
あるので助かります。
ブックカフェでコーヒーフロートを
頼んでひと休み。



帰りは神保町の駅から。
ホームの壁が本棚になってました。
洒落てます。



私が行ったときは平日だったので
ほどほどに空いていてカフェもスムーズに入れるし
とても楽しかったのでまた行こうと思いました。

それでも旅に出るカフェ

ときどき旅に出るカフェ」の続編、
「それでも旅に出るカフェ」を読みました。



久しぶりに奈良さんと円に会えて
嬉しかったんですが、前作と比べると
読後感としては微妙かな。


というのも、2人の物語が表面的というか。
もちろん接点はあるんですよ。
物語はカフェ・ルーズで始まり解決するし。
でも2人の物語がない。


前作の最後に出てきた円の同性の恋人の
存在も全く触れられていないし、
奈良さんは毎回ずっとコロナのことばかり
気にしている。


だから主役2人の生活に深みがなくて、
短編ゲストの話だけがさらさらと流れていく。


そして円は何故だか探偵みたいになってるし、
フェミニズムを感じさせる発言も多い。
同じ女性として共感する言葉も多いんだけど、
ミステリと言う勿れ」でも思ったんだけど
言ってることは間違ってなくても、あまりくどいと
正論なだけに周りが引いてしまうというか。


つくづく正論ってやつは繊細で
取り扱い注意の代物だなと思ったりします。


ネガティブな感想になってしまいましたが、
そんななかで私が思わずうなずいたのが
こちら。


こちらがうれしくなる、気が楽になることを
言ってもらえてると感じるときは、たぶん、
相手の方がこちらに気を配ってくれているのだ。
若い頃は、そのことになかなか気づけなかったし、
たぶん、気づかない人は一生気づかないままだろう。


私も同じこと思ってた!
若い時みたいに本当に気の合う仲間だけで
盛り上がってたときは、双方ともが
楽しんでいたんだと思う。
それが一番理想の付き合い方だけど、
年を重ねるごとにいつからか
思うようになったんです。
ひょっとすると
自分が、今日楽しかったなと思う時って
相手が自分に合わせてくれてたからなのかも
しれないなって。


もちろん相手は「気にし過ぎー、
そんな我慢してないよ」て
思ってるかもしれないけど、
でもきっとそういう一面もあるかも
しれないということは
人間関係を長続きさせるために
知っておくことは大事かもしれない。


あとは他愛のない会話を
英語ではスモールトークという話。


私も若い時は世間話が苦手でした。
もっと本質的な実のある話がしたかったから
形式的で表面的な会話なんて
時間の無駄だと思ってました。


でもこちらも年を重ねて変わりました。


スモールトーク大事。


毎回がっつり相手との仲を
深めようとするのは大変だし
相手だってそこまで思っていない。


挨拶や簡単な世間話を交わして
自分や相手を互いに見知ることによって
何かあったときに力になってもらえる。
そういうのも大人として大切だなって。


なんて色々と思いました。
次回作がもしあるなら、
ぜひ奈良さんと円の物語が読みたいです。

YOASOBI

テレビでやってる「日曜日の初耳学
林修先生が様々な芸能人にインタビューする
コーナーが好きです。


というのは、林先生のインタビュワーとしての
上手さに毎度唸らされるというか。


普通のインタビュワーの質問って、
休日は何してますか?
今ハマってるものは?
どんなタイプの女性(男性)が好み?
とか、いつもだいたいそんなんばかり。


でも林先生は作品に沿った深い質問を
してくれるので、聞いてて楽しいのだ。


で、先週は「YOASOBI」だったので見てみました。
(15日までならTverで無料で見れます)
色々興味深かった。


もちろんYOASOBIの曲は他にも色々知ってるし
ボーカルのikuraちゃんの高音の声が良いなと
思ってはいましたが、
初めて「アイドル」を聴いたときは
出だしでもう心掴まれちゃいました。



YOASOBI「アイドル」2023.6.4@さいたまスーパーアリーナ


曲も好きだし、ボーカルのikuraちゃんの声がマジで良い。
テレビの音楽番組で生で聴きたいと
ずっと思ってるのに全然歌ってくれないので
何でだろうと思ってたんですが、
インタビューの話を聞いて納得しました。


曲担当のAyaseは音楽ソフトで作曲してるので
音域には限界は無いし息継ぎもしなくて大丈夫。
でもそれを人間が歌うのは難しい。
そら、ikuraさんも大変だ。


他にもAyaseさんは4人の作家さんと組んで
物語から作曲をしてるんですが、
中でも私が好きだったのはこちら。
森絵都さんの「ヒカリノタネ」という作品から
作曲された「好きだ」




YOASOBI「好きだ」Official Music Video



めっちゃ可愛い。女子のダンスシーンも可愛い。
「青春」「恋愛」「甘酸っぱい」「10代」「告白」
というキーワードを読み込んで作曲されたとのこと。
青春良いなあ。


あともう1つが辻村深月作品「ユーレイ」から
作曲された「海のまにまに」



YOASOBI「海のまにまに」Official Music Video


人生に絶望し家出する少女の物語。
浮遊感を出すために音数を少なくしたということです。


私が中高生の頃、この曲に出会ってたら
もう絶対どハマってただろうな。
例えて言うなら渡辺美里の「My Revolution」
みたいな感じか。


年を重ねるごとに新しい曲にうとくなるし、
アイドルたちの顔も見分けつかなくなるし、
情報も過多、もう何もかも過多で、
正直、収集がつかない。


でも流行りに無理に乗っからず、
というか乗れないので
自分の年代にあった進み方で
これからも進んでいこうと思います。




(タイトル名をちょっとだけ変えました)